主人公・井之頭五郎を演じる松重豊は、撮影当日の朝から食事を完全に断って現場入りする。胃袋を極限の空腹状態に追い込むことで、料理が運ばれてきた瞬間の「本能的なリアクション」をカメラに焼き付けるためだ。作り物の演技ではなく、一人の人間が目の前の皿と対峙するドキュメンタリーのような緊張感がスタジオならぬ実在の店舗に満ちる。
メイキング現場で目撃されたのは、まさに真剣勝負そのもの。松重は基本的に料理のシーンを「テストなしのぶっつけ本番」で挑む。熱々のスープを口に運ぶ絶妙な間合い、箸を入れた瞬間の断面の見せ方、そして咀嚼音の響きまで、すべてが生の呼吸で紡ぎ出される。
一方で、過酷な撮影ならではのNGシーンも存在する。勢いよく頬張りすぎて熱さに悶絶し思わず噴き出しそうになった瞬間や、絶妙なタイミングでお腹の虫がマイクに拾われてしまいスタッフ一同が吹き出したハプニングなど、張り詰めた緊張がふっと緩む貴重な未公開シーンは現場の温かさを物語っている。