羂索が千年にわたり暗躍を続けられた背景には、自身の生得術式が深く関係しています。その能力とは、「脳を入れ替えることで他者の肉体を乗っ取る術式」です。この術式を行使すると、対象の肉体に刻まれた生得術式や記憶をそのまま行使できるだけでなく、肉体を乗り換えても過去に獲得した術式を保持し続けることができます。
明治の世において、羂索は「史上最悪の呪詛師」として名を残した加茂憲倫(かものりとし)の肉体を奪っていました。この時代には、呪霊の子を孕む特異体質の女性を利用し、非人道的な実験の末に「呪胎九相図」を生み出しています。現代の加茂家において憲倫の名が最大の汚点としてタブー視されているのも、すべては羂索の過去の所業が原因でした。
額に走る特徴的な縫い目は「肉体を転々とする術式を成立させるための縛り(制約)」であり、傷を完全に治癒することはできません。羂索はこの傷跡を隠すことなく、時代ごとの有力な術師の肉体を奪いながら、千年にわたる壮大な計画を着実に前進させていったのです。