「妻と飛んだ特攻兵」の実話は、太平洋戦争終結の合図とされた1945年8月15日以降の旧満州で起きた出来事です。当時、満州には不可侵条約を破棄して電撃的に侵攻してきたソ連軍(赤軍)が押し寄せており、関東軍の主力が南方へ転出していたこともあって、防衛線は各地で壊滅状態に陥っていました。
終戦の知らせが届いてもなお、満州に残された日本人開拓民や軍属の家族に対するソ連軍の進撃は止まりませんでした。各地で民間人の虐殺や女性に対する暴行、略奪が横行し、逃げ場を失った日本人居留民は飢えと恐怖のどん底に突き落とされていたのです。
こうした混乱の最中、吉林省の大虎山(だいこざん)飛行場に配属されていた陸軍第五練習飛行隊の教官・谷藤徹(たにふじ とおる)少尉を中心とする青年将校たちは、民間人を守り、武人としての誇りを貫くために自発的な出撃を決断します。この満州での終戦後の特攻こそが、歴史の闇に埋もれかけていた最後の攻撃隊の真実でした。