個人の演奏力と、バンドとしてのアンサンブル。この二つの間にある巨大なギャップをいかに埋めるかが、物語の前半における最大のテーマだった。ネット世界で「ギターヒーロー」として磨き上げられた技巧は、独奏としては超一流でありながら、他者の音を聴き、呼吸を合わせるアンサンブルの現場では当初、全く機能しなかった。
しかし、結束バンドのメンバーである伊地知虹夏、山田リョウ、喜多郁代との出会いが、彼女の内に眠っていた「伴奏者」「アレンジャー」としての資質を開花させる。自分の殻に閉じこもるためのギターが、誰かとつながるための言葉へと変化した瞬間、バンドのサウンドは爆発的な進化を遂げた。ライブ中のアクシデントで見せたボトルネック奏法やアドリブソロは、単なるハプニングの打開策ではなく、追い詰められた土壇場で本領を発揮する天才ギタリストの本能そのものだった。