出雲へ赴かず、各地でお留守番を務める神々は決して格が低いわけではありません。むしろ日々の生活、家庭、集落の境界など、私たちの生命線に最も近い領域を司る尊い神々が名を連ねています。
1. 恵比寿様(事代主神・少彦名神)|留守神の筆頭格
留守神の代表格として全国で親しまれているのが恵比寿様です。七福神の一柱としても名高い恵比寿様が居残る理由には諸説あります。神話において耳が遠く集合の合図が聞こえなかったという愛嬌のある説から、商売繁盛や豊漁を守るために休む間もなく現場で働き続けているという説まで様々です。出雲の「神在祭」の期間、各地では恵比寿様をもてなす盛大な祭りが行われます。
2. 荒神・竈神(こうじん・かまどがみ)|家庭の火と食を司る守護神
台所の竈(かまど)や火処を守る荒神・竈神も出雲へは行きません。火は人間に恩恵をもたらす一方、一歩間違えれば集落全体を灰燼に帰す恐ろしい脅威となります。「留守中に火を出しては一大事である」という生活の知恵から、火の神は常に家庭の中枢に留まり、厳しく不浄を見張り続けています。
3. 道祖神(どうそじん・塞の神)|集落の境界で疫病と悪霊を阻止する砦
村境や峠、交差点に祀られる道祖神は、外の世界から侵入しようとする悪霊や疫病(厄災)を水際で食い止める結界の役割を果たしています。主力となる神々が出雲へ集結している隙を突き、魔物が集落へ侵入するのを防ぐため、24時間態勢で境界線を守り続けているのです。
4. 屋敷神と地主神(やしきがみ・じぬしがみ)|土地の根源的な安定を保つ守護霊
個々の家敷の敷地内や鎮守の森に鎮座する屋敷神や地主神も、その土地に根ざした不動の神霊です。特定の土地・家系を守護する契約的性格が強く、持ち場を離れることはありません。家の繁栄や家族の健康を足元から支え続けています。