「大熊猫」という名付けの歴史を語るうえで外せないのが、レッサーパンダの存在です。実は、生物学の歴史において先に「パンダ」と名付けられたのは、白黒のジャイアントパンダではなくレッサーパンダでした。
1825年、フランスの動物学者によって西洋に紹介されたレッサーパンダは、ネパール語で「竹を食べるもの」を意味する「ニガリヤ・ポニャ(nigalya ponya)」にちなんで「パンダ」と命名されました。赤茶色の毛並みと長い尻尾を持ち、木の上で丸くなって眠る姿はまさに「小さな猫のような動物」であり、中国では「小熊猫」や「猫熊」と呼ばれていました。
それから約45年後の1869年、フランスの宣教師アルマン・ダヴィドによって四川省で巨大な白黒の動物が発見されます。当初は「シロクログマ」と分類されましたが、レッサーパンダと同様に竹を主食とし、手首に第六の指(種子骨)を持つ共通点から、同じグループの大型種とみなされて「ジャイアントパンダ(大熊猫)」と命名されました。
結果として後から見つかった白黒の巨体が「パンダ」の代表格となり、元祖であった小熊猫は「レッサー(英語で"より小さい")」という修飾語を付けられて「レッサーパンダ」と呼ばれる主客転倒の歴史を辿ることになったのです。