市販のスティックのりが「普段は固形なのに、紙にこすりつけると滑らかに崩れて伸びる」理由をご存じだろうか。工業製品の多くには、ポリビニルピロリドン(PVP)という合成水溶性ポリマーや変性デンプンが主成分として使われている。
このPVPと高級脂肪酸塩(石けん成分)を熱水で溶かし合わせると、冷えた際に石けん分子が三次元の網目構造(ゲルネットワーク)を形成する。この網目の中に水分と接着ポリマーが閉じ込められることで、直立する硬さを持つ。しかし紙に押し当ててせん断力(摩擦)を加えると、網目構造が一時的に崩れて液状化し、紙の繊維へと浸透する。手作りレシピにおける石けんとデンプンの組み合わせも、まさにこの分子構造の原理を台所でミニチュア再現しているのである。