音楽的側面において、『Ocean Eyes』は2010年代半ばのメインストリーム・ポップに対する鮮烈なアンチテーゼでもあった。当時席巻していた過剰にコンプレッションをかけたEDMサウンドとは対極をなす、余白を極限まで活かしたミニマルなプロダクションが貫かれている。
幽玄なリバーブに包まれたシンセサイザーが織りなすドリーム・ポップの浮遊感と、抑制された808ベースが刻むエレクトロ・ポップのモダンな骨格。フィニアスは何重にも重ねたビリーのコーラスをまるで聖歌隊のパッドのように配置し、耳元で息遣いまで聴こえるような距離感を演出した。この親密なサウンドスケープこそが、後に彼女のトレードマークとなる「ウィスパー・ボイス革命」の決定的な礎となったのである。