「家庭のガスコンロやホットプレートで良い肉を焼いても、焼肉店の味にならない」と悩む人は少なくありません。この現象には、気体の燃焼化学が深く関わっています。
都市ガスやプロパンガスは炭化水素化合物であり、燃焼すると化学反応によって大量の水蒸気(水分)を発生させます。ガス火で肉を焼くと、知らず知らずのうちに水蒸気の中で肉を蒸し焼きにしているような状態になり、表面がパリッと乾かず、余分な水分によってうま味が薄まってしまいがちです。
一方、木炭はほぼ純粋な炭素の塊であるため、燃焼しても水分がほとんど発生しません。完全な「ドライな高熱」で加熱できるため、肉の表面の水分を瞬時に飛ばし、グルタミン酸やイノシン酸といった濃厚なうま味成分を凝縮させることができます。これが、炭火とガス火の焼肉における決定的な違いです。