日常的に使われる「ご無沙汰」という表現だが、その漢字の成り立ちを深く知る機会は意外に少ない。小学館が提供する国語辞典『デジタル大辞泉』によると、「沙汰」には「便り」「知らせ」「音信」といった意味が含まれており、「無沙汰」は便りや連絡がない状態を指す。ここに丁寧さを表す接頭語「ご(御)」を冠することで、長期間連絡を怠っていた自身の非礼をへりくだって詫びる敬語表現として定着した。
もともと日本語における「沙汰」は、水中の砂をより分けて金などを採掘する行為に由来し、転じて物事の是非を判断することや公の沙汰を意味していた。それが時代とともに「知らせ」や「噂」を指すようになり、連絡が途絶えている状態を「無沙汰」と呼ぶようになった背景がある。相手が連絡をくれなかったことを責める言葉ではなく、あくまで「こちらから連絡を差し上げず申し訳ありません」という謙虚な自己省察が根底にある。