衛生動物学の観点から見ると、家庭内で吸血被害を引き起こす主要害虫は、それぞれ全く異なる生息基盤を持っている。被害を根本から断ち切るには、相手の生息圏に応じた環境改善が欠かせない。
屋内のダニ被害で最も頻度が高いのはツメダニだ。本来は人を能動的に吸血する種ではなく、チリダニやチャタテムシなどの微小害虫を捕食する肉食性のダニである。しかし、畳や絨毯、寝具などでチリダニが異常繁殖すると、それに伴ってツメダニの個体数も爆発的に増加し、偶然接触した人間の皮膚を誤って刺咬し体液を吸う。この際、唾液腺物質が皮膚に注入されることで激しいアレルギー反応が生じる。一方、イエダニはクマネズミや鳥類の巣に寄生するダニであり、宿主が死んだり巣立ったりした際に宿主を求めて室内へと侵入し、就寝中の人間を激しく吸血する。
対するノミ被害の主犯はネコノミだ。名前に「ネコ」と付くものの、犬やタヌキ、そして人間にも無差別に寄生・吸血する。散歩中のペットの体毛や人間の靴、ズボンの裾に付着して屋外から室内に持ち込まれるケースが大半を占める。大手殺虫剤メーカーのアース製薬をはじめとする研究機関のデータによれば、ネコノミの成虫は1日に数十個の卵を産み落とし、絨毯の奥やフローリングの隙間で瞬く間に幼虫・蛹へと成長する。吸血しなくても長期間生存できる蛹の存在が、根絶を難しくさせる主因となっている。