全国の労働基準監督署や労働局に寄せられる紛争相談では、「復職の診断書を提出したのに、会社の産業医面談だけで『復帰不可』と断じられ、そのまま退職させられた」といった労働者からの悲痛な声が絶えません。
裁判実務において名高い「エスペック事件」などのリーディングケースが示す通り、裁判所は労働契約終了の形式が自然退職であっても、実質的な終結判断が会社側に委ねられている場合は、厳格な解雇権濫用法理を類推適用します。「本当に労務の提供ができないのか」「リハビリ勤務や部署異動による職場復帰の道はなかったのか」といった会社の配慮義務が厳しく審査されるのです。
労働者側が不当な退職処理に対抗するためには、日頃からの証拠保全が欠かせません。主治医による就労可能の診断書、会社との面談録音、メールの文面を確実に手元に残し、納得のいかない退職合意書には署名しないことが身を守る防波堤となります。