愛犬の耳をめくった際、まるで乾燥したコーヒーの粉や炭のような黒褐色の耳垢が壁面を埋め尽くしている場合、その正体の多くは「ミミヒゼンダニ(耳疥癬虫)」の寄生によるものです。体長わずか0.3〜0.5mm程度の半透明なダニであり、肉眼では白い小さな点として蠢く様子が辛うじて確認できる程度ですが、耳道内では驚くべきスピードで増殖を繰り返します。
ミミヒゼンダニは犬の耳道内に生息し、脱落した上皮や組織液、耳垢を餌にして生活しています。ダニが耳の中を這い回る物理的刺激に加え、ダニの唾液や排泄物に対するアレルギー反応が引き起こされることで、犬は耐え難いほどの猛烈な痒みに襲われます。犬が耳を異常に痒がる理由の背景には、この激しい炎症反応が存在しています。
また、炎症に伴って皮脂分泌が過剰になり、細菌や酵母菌(マラセチア)の二次感染を併発しやすくなります。その結果、耳からツンとした酸っぱい臭いや腐敗臭のような異臭が発生し、耳垢の量も急激に増加していくのです。
主な感染経路は、すでに感染している犬や猫との直接接触です。特に保護犬を迎えた直後や、ペットショップ・ブリーダー環境、ドッグランやペットホテルでの接触を介して感染するケースが目立ちます。ダニ自体は宿主の体外でも数日間生存できるため、感染動物が使ったベッドやブラシを介した間接感染にも警戒が必要です。