インターネット上には「息が荒くてもご飯を食べていれば大丈夫」「体を氷水で急激に冷やせば熱中症は治る」といった危険な俗説が散見されますが、これらは現場の獣医療知見とは真っ向から矛盾します。
第一に、犬は本能的に体調不良を隠す習性があります。強い痛みや呼吸器の圧迫感に耐えながらでも、目の前に出されたフードを反射的に口にすることがあります。「食欲があるから軽症」と過信して受診を遅らせた結果、翌朝に肺水腫が劇症化して急死する事例は後を絶ちません。
第二に、熱中症が疑われる際に氷水風呂に浸けたり保冷剤を全身に直接巻き付ける行為は逆効果です。過度な急冷は皮膚表面の末梢血管を急激に収縮させ、かえって体内深部の熱が体外へ逃げ場を失う「熱トラップ現象」を引き起こします。濡らしたタオルを体にかけてうちわや扇風機で風を送る、または太い血管が通る首の付け根・脇の下・内股のみを局所的に冷やすのが正しいアプローチです。