彼女の名を世に知らしめた最大のきっかけは、作品が持つ圧倒的な映像喚起力と、それに伴う相次ぐメディア化でした。とりわけデビュー作『食堂かたつむり』(ポプラ社刊)は、失声症になった主人公が実家の小さな食堂で料理を通じ、訪れる人々の傷ついた心を癒やしていく感動作。映画化されて大ヒットを記録し、フード理論をも包含する彼女特有の食描写は多くの読者の胃袋と心を掴みました。
また、鎌倉で代書屋を営む女性の成長と人々の絆を温かく描いた『ツバキ文具店』も忘れてはなりません。NHKでドラマ化された際、主演の多部未華子が見せた情愛あふれる演技と、手紙というアナログな温もりが話題となり、ロケ地巡りがブームになるほどの現象を巻き起こしました。さらに、人生の終着点であるホスピスでの日々を慈しみをもって描いた『ライオンのおやつ』は、全国の書店員が支持する本屋大賞へのノミネートやNHKドラマ化を経てベストセラーに。ドラマ版は現在もNHKオンデマンドで配信されており、映像から原作へと足を踏み入れるファンが絶えません。