梛の木を語る上で欠かせないのが、和歌山県新宮市に鎮座する熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)のご神木です。境内には、平安末期に平重盛が植えたと伝えられる推定樹齢約1000年の巨大な梛の大樹がそびえ立ち、国の天然記念物にも指定されています。熊野三山を巡拝する旅人たちは、道中の安全を祈願してこの梛の葉を笠や懐に納めて歩きました。
また、歴史上の大恋愛として知られる源頼朝と北条政子の逸話にも梛が深く関わっています。伊豆の流刑人であった頼朝と、土地の豪族の娘であった政子は、周囲の猛反対を乗り越えて結ばれました。その際、政子は梛の葉を愛の証として手鏡の裏に忍ばせ、頼朝もまたその葉を肌身離さず持ち歩くことで互いの絆を固く誓い合ったと伝えられています。
このロマンチックな伝承から、梛の木は「困難を乗り越えて結ばれる最高の縁結びの木」として全国に知れ渡るようになりました。現在でも多くの寺社で、梛の葉を用いた縁結び守りが授与されています。