契約結婚を検討する際、最も慎重にならなければならないのが「偽装結婚」との法的な線引きです。「契約に基づき婚姻届を出す」という行為は、一歩間違えれば刑事罰の対象となるリスクを孕んでいます。
日本の法律上、契約結婚と偽装結婚を分ける決定的な要素は民法742条第1号が定める「人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」に該当するかどうかです。判例実務において「婚姻をする意思」とは、単に婚姻届を提出するという形式的な意思だけでなく、「真に夫婦としての精神的・肉体的・経済的な共同生活を営む合意」を指すと解釈されています。
以下の条件に該当する場合、契約結婚であっても「偽装結婚(無効な婚姻)」とみなされ、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪(刑法157条1項、5年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われる恐れがあります。
- 在留資格の不正取得目的:外国人に配偶者ビザを取得させる目的で、金銭の授受を伴い名義を貸す行為。
- 単なる名義貸し・利益供与:住宅ローンの共同名義取得、遺産相続の資格獲得、税制上の控除適用のみを目的とし、生活の実態が完全に欠如している場合。
- 戸籍上の操作のみを目的とした虚偽届出:初めから共同生活を営む意思が全くなく、社会的体裁のためだけに書類上のみ夫婦を装う行為。
真摯な契約結婚、あるいは友情結婚の場合、恋愛感情や性交渉が存在しなくても、「互いに協力して経済的・社会的な共同生活を営む」という実質的な合意が存在していれば、法律上の婚姻として有効に成立します。最高裁判所の判例でも、婚姻の本質は多様な生活共同体のあり方を認める方向にあり、性交渉の有無のみをもって婚姻を無効と判断することはありません。しかし、客観的な共同生活の実態(生活費の共有や定期的連絡、住居の確保など)が一切証明できない場合、法的な疑義を免れない点に細心の注意が必要です。