看板で見かける「お食事処」の読み方は「おしょくじどころ」です。言葉の構成としては、飲食を指す「食事」に場所を意味する「処(ところ)」が結びつき、丁寧さや上品さを添える接頭辞「お(御)」を冠した美しい日本語表現に他なりません。
歴史的な起源をたどると、そのルーツは江戸時代の街道沿いにあった「立場茶屋(たてばぢゃや)」や宿場の「旅籠(はたご)」に行き着きます。当時、長旅に疲れた旅人に対して、単に渇きを癒やすだけでなく、温かい白米や汁物、煮物などのしっかりとした膳を用意してもてなした一画が、のちの食事処の原型となりました。近代に入り、都市部でセルフサービスやスピード重視の合理的な「大衆食堂」が普及する一方で、どこか家庭的で落ち着いた風情を残し、丁寧に調理された御膳を提供する場所として「お食事処」という屋号が愛用されるようになった経緯があります。
現在でもお食事処の類語と言い換えには「お食事処処」「和食処」「食事処」「御飯処」「お食事処」など多彩なバリエーションが存在します。いずれの表現にも通底しているのは、単なるエネルギー補給の場にとどまらない「ゆったりと食事を味わってほしい」という店側の心意気です。