医学界において正式には「睡眠時遊行症」と診断されるこの症状。これまで長らく単なる「子どもの成長期の癖」や「ストレスの副産物」程度に片付けられがちだった。しかし、米国睡眠医学会(AASM)や日本睡眠学会が発表した最新の知見は、その常識を根底から覆している。
人間の睡眠は、脳が活発に活動して夢を見るレム睡眠と、脳が休息に入るノンレム睡眠に大別される。異常行動が発生するのは、主に最も深いレベルのノンレム睡眠(ステージ3〜4の徐波睡眠)の最中だ。脳の大部分、特に感情や高次な判断を司る前頭葉が昏睡状態のような深い眠りにある一方で、運動機能をコントロールする運動野や感情回路の一部だけが突然「覚醒」する。いわば、脳の前半と後半でオンとオフがねじれ、体が勝手に動き出してしまう生理現象なのだ。