作家・東山彰良の本名は王震緒。西南学院大学大学院で経済学を学び、後に同大学で非常勤講師として中国語を教えていた経歴を持つ。学問と執筆の二足のわらじを履く生活は決して平坦ではなかった。昼間は壇上に立ち、夜はデスクに向かって物語を紡ぐハードな日々。その過密スケジュールを物理面・健康面でコーディネートしたのが妻の存在だった。
福岡という土地に根を張りながら、台湾の原風景や独特の空気感を小説に昇華させていく作業は、精神的にも大きなエネルギーを消費する。大学での講義を終えて帰宅した彼を温かく出迎え、創作に必要な「静寂と安心感」を提供し続けた家庭環境こそが、彼の文筆家としての足腰を強靭なものに鍛え上げた。