彼らは決して、悪意だけで動いているわけではない。むしろ「自分は会社のために正しい指導をしている」と盲信している点に根深い病理がある。この現象を世に知らしめた精神科医の松崎一葉氏は、著書『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』の中で、その精神構造を鋭く解剖した。専門である産業精神医学の見地から見ると、彼らには他者の痛みに対する共感性が致命的なまでに欠落している。
「なぜ私ができたことが君にはできないのか」。この一言に彼らの思考回路が凝縮されている。自己の成功体験を絶対的な正義とし、未熟な部下を教育するのではなく「劣等な存在」として切り捨てる。臨床心理の領域では、自己愛性パーソナリティ障害に近い肥大化したプライドと脆弱な防衛本能が指摘されることも少なくない。自分より優秀な兆候を見せる部下や、自分のコントロールに従わない相手を本能的に察知し、自尊心を守るために叩き潰すのだ。