本学がデザイン産業に与えてきた影響の大きさを語るうえで、グラフィックデザイナーの原研哉の名を外すことはできない。同氏が手掛けてきた無印良品デザインプロジェクトに象徴されるように、「空(エンプティネス)」や「白」を基調とした極限まで無駄を削ぎ落とす造形思考は、日本のデザインの美意識を世界へと知らしめた。その根底にあるのは、単に美しい製品を作ることではなく、生活者の営みそのものを捉え直すという本質的な問いかけである。
こうした思想は、教壇を通じて次代のクリエイターたちへと確実に受け継がれている。製品や広告といった表層のスタイリングにとどまらず、社会基盤や制度、コミュニケーションのあり方そのものをデザイン対象として再定義する姿勢。それこそが、産業界で長年にわたり第一線で活躍し続ける人材を排出し続ける理由だ。