著者の原点を語る上で欠かせないのが、早川書房から刊行された大作『ゲームの王国』であり、時間改変をテーマにした傑作短編集『嘘と正典』である。カンボジアの虐殺の歴史と超能力を融合させた前者は日本SF大賞を受賞し、日本SF作家クラブでもその突出した才能は早くから注視されていた。
SF文学の土壌で鍛え上げられた仮説構築力と論理の強靭さ。それこそが、彼を現代日本文学の旗手たらしめている最大の武器だ。「もしも」という思考実験を極限まで突き詰め、冷徹な因果律で世界を組み上げる。その手法は、従来の文学が寄りかかってきた情緒や私小説的感傷を心地よいスピードで解体していく。