混同されがちな俳句と川柳だが、その成り立ちと着眼点は対極に近い。
最大の違いは「季語の有無」と「視点の向き」だ。俳句が季語を通じて自然と自己の照応を試みるのに対し、川柳は人間社会の機微や矛盾を観察者の目で切り取る。有季定型を美徳とする俳句の世界では季重なりや無季が厳しく吟味されるが、川柳では季節感を盛り込むかどうかは完全に作者の裁量に委ねられている。
さらに、感情の出力方法も異なる。俳句が余情や静寂を重んじるならば、川柳はウィット、ユーモア、そして皮肉が生命線だ。整った景色を詠むのではなく、人間が隠したがる本音や格好の悪さをユーモラスに暴き出すことこそが、この定型詩が持つ本来の切れ味と言える。