そもそも、私たちが日常的に口にする「Aカップ」「Cカップ」という記号は何を基準にしているのか。日本の下着の規格は、経済産業省が管轄する日本産業規格 (JIS規格)「JIS L 4006(ファンデーションのサイズ)」によって厳格に規定されている。
JIS基準におけるカップサイズは、立った状態で計測したトップバストとアンダーバストの「差」だけで機械的に決まる。差が約10cmならAカップ、12.5cmならB、15cmならC、17.5cmならD、20cmならE——と2.5cm刻みでアルファベットが上がっていく。
しかし、人体計測学の視点に立つと、この2次元的な引き算には限界がある。人間の胸郭は平らな円柱ではない。楕円のカーブも違えば、肋骨の傾斜、乳房の底面積(バージスライン)、バージスラインに対する突出度合いも千差万別だ。同じ「差15cm(Cカップ)」であっても、胸の土台が広くて突出が浅い人と、底面積が狭く前へ鋭角に突き出している人では、体積も見た目のボリュームも全く異なる。単純な計算式だけでは語れない立体構造の複雑さが、サイズ選びの混乱を生み出す元凶なのだ。