東京の路地を語る上で、写真家・森山大道の存在を避けて通ることはできない。半世紀以上にわたり、カメラを片手に路地を彷徨い、野良犬のように都市の断面をスナップし続けてきた彼のモノクローム作品は、光よりもむしろ「影」の中に宿る東京の本質を露わにしてきた。
荒れた粒子、ブレとボケ。路上に転がるタバコの吸い殻や、雑居ビルの狭間にへばりつく非常階段を捉えた幾多のドキュメンタリー映像の中で、森山は路地を「都市の子宮であり、欲望の吹き溜まり」と形容する。彼が切り取った生々しいストリートの記憶は、計算された近代都市の計画図からはみ出した、人間の野性そのものだ。その視線は今、SNS時代を生きる若い世代の写真家たちにも強烈なインスピレーションを与え続けている。