キメラ=アント編の本質的な恐ろしさは、王メルエムが人間味を獲得していくプロセスと並行して、人間側の「底知れぬ悪意とエゴ」が暴かれていく構造にある。
ハンター協会会長ネテロは、メルエムとの死闘の果てに自爆兵器「ミニチュアローズ」を起動させた。その際、ネテロが見せた表情は神聖な英雄のそれではなく、人間の醜悪な執念と技術的悪意に満ちていた。人間側は生き残りのために大量破壊兵器という「悪の英知」を行使し、一方で異形のモンスターであったはずのメルエムは、コムギとの出会いを通じて愛や尊厳といった「人間の最も高貴な部分」を獲得していったのだ。
この強烈な皮肉がストーリーに圧倒的な奥行きを与えている。メルエムとコムギの絆は、人間の残酷さが引き起こした兵器の毒によって絶たれるが、同時にその毒の暗闇の中でこそ二人の精神的結合は完成された。