数多の飲食店がひしめく新宿で「本当に美味い店」を絞り込む作業は、砂漠で一粒の砂金を掘り当てる作業に似ている。数ヶ月先まで席が埋まる完全予約制の高級店が脚光を浴びる一方で、看板すら掲げずに常連の足が途絶えない路地裏の隠れ家が静かに共存しているのが、この街の底知れぬ魅力だ。
職人の手元が見える白木のカウンターで、串が供される絶妙なタイミングに息をのむ。ソリレスやちょうちんといった希少部位を巧みに操り、部位ごとの水分量や繊維の走り方に合わせてミリ単位で包丁を入れる店がある。対照的に、昔ながらのタレを継ぎ足しながら、圧倒的なポーションと豪快な火力で肉汁を閉じ込める名店も健在だ。予約困難店が提示する緻密なコース仕立ての感動と、偶然見つけた小径の店で味わう衝撃的な一本。選択肢の広さと質の深さこそが、新宿という迷宮の真骨頂と言える。