鳩ノ巣渓谷の景観を際立たせているのは、秩父古生層の緻密な岩石群だ。何万年もの年月をかけて多摩川の奔流が削り削った巨岩は、まるで彫刻作品のような力強い陰影を刻んでいる。
一般的に知られる「鳩ノ巣吊り橋」の上からの見下ろしも素晴らしいが、本格的な写真を狙うなら吊り橋を渡りきった先にある巨岩の影、通称「将軍岩」の足元付近が穴場だ。岩の裂け目から水面ギリギリに視線を落とすと、川底の白い小石まで透けて見えるエメラルドグリーンの深淵と、武骨な灰色の岩肌が完璧な黄金比でフレームに収まる。陽光が垂直近くから差し込む正午前後のわずか1時間が、水面の透明感を際立たせる至高のタイミングとなる。