外見上の最大の違いは、具材を包む「生地」と「肉の焼き方」に現れます。
タコス生地(トルティーヤ)とピタパンの製造工程の違い
タコスの生地である「トルティーヤ」は、乾燥とうもろこしを石灰水で処理する伝統技法(ニシュタマリゼーション)を経て粉にした「マサ」を薄く伸ばして焼きます。酵母による発酵を行わない無発酵パンのため、薄くてしなやか、そしてとうもろこし特有の香ばしい風味が特徴です(アメリカ北部やテクス・メクス料理では小麦粉のフラワートルティーヤも使われます)。
対するケバブの「ピタパン」は、小麦粉・水・塩・イースト菌を混ぜて発酵させた中東の伝統パンです。高温のオーブンで短時間焼き上げることで中が風船のように膨らみ、半分に切ると「内側に空洞(ポケット)」ができます。このポケットの中に削ぎ落とした肉や千切りキャベツを詰め込むのがケバブサンドの構造です。
ケバブの「回転肉」とタコスの「カルニタス・タコミート」
ケバブの象徴といえば、店頭で巨大な肉の塊が垂直の串に刺さってグルグル回る「ドネルケバブ(Döner Kebab)」です。「ドネル」とはトルコ語で「回転する」を意味します。薄切り肉を何層にも重ねて円柱状に成形し、外側からバーナーでじっくり炙りながら、焼き上がった表面を専用の長いナイフで薄く削ぎ落とします。宗教上の理由(ハラール)から羊肉(マトン・ラム)、鶏肉(チキン)、牛肉が使われ、豚肉は一切使われません。
タコスの肉は多彩です。本場メキシコで絶大な人気を誇るのが、豚肉をラードやオレンジ、スパイスとともに大鍋でじっくり煮込んだ「カルニタス(Carnitas)」や、串焼き豚肉にパイナップルを合わせる「パストール(Al Pastor)」です。また、アメリカ発祥のタコスでは、牛ひき肉にクミンやオレガノを効かせた「タコミート」が定番となっています。