音楽制作の現場取材および公式スコアの解析によると、RADWIMPS「前前前世(movie ver. / original ver.)」の音域はmid1D#(D#3)〜hiA(A4)の1オクターブ半(17半音)に収まっています。一見すると極端に広大な音域ではないものの、その音域が配置されている「高さの重心」にこそ、歌い手を翻弄する決定的な構造が存在します。
最低音となるmid1D#は、Aメロの冒頭「やっと眼を覚ましたかい」の出だし「や」の部分などで登場します。成人男性にとっては無理なく発声できる中低音域ですが、息を混じらせたウィスパー気味のアタックが要求されるため、音程が下にぶら下がりやすいトラップを含んでいます。
対して最高音のhiAは、サビのハイライトである「前前前世から僕は」の「ぜ(前)」や「ぼ(僕)」、さらには「そのぶきっちょな笑顔を」の「え(笑)」などで幾度となく打ち鳴らされます。一般成人男性の地声限界(換声点=チェストボイスから裏声・ミックスボイスへ切り替わる境界)はmid2F〜mid2G付近とされるため、hiAを地声の張り上げだけで押し通そうとすると、喉を締め付ける「ハイラリンクス状態」に陥り、1コーラス目だけで声帯が疲弊するリスクを孕んでいます。