わらびを手に入れた際、最もやってはいけないのが「生のまま冷蔵庫に入れて放置すること」です。わらびは収穫された瞬間から自己防衛のためにリグニンと呼ばれる不溶性の食物繊維を生成し、茎全体が急速に硬質化します。さらに、苦味成分や有毒アルカロイドであるプタキロサイドが酸化によって強まり、時間が経つほどエグみが抜けない状態に陥ります。わらび生保存が実質的に不可能なのはこのためです。
美味しさを閉じ込める大前提となるのが、正しい山菜下処理方法の実践です。その中心となるのがわらび重曹アク抜きであり、アルカリ性の環境を作ることでわらびの細胞壁を適度に軟化させ、苦味と有害成分を効率よく湯中に溶出させます。
具体的な下処理手順は以下の通りです。まず、わらび1kgに対して水3リットルを沸騰させ、火を止めてから重曹を大さじ1(約15g)投入します。そこに綺麗に水洗いしたわらびを敷き詰め、落とし蓋をして浮き上がりを防ぎます。沸騰したままグラグラ煮込むと繊維が崩壊してドロドロになるため、「熱湯に重曹を溶かして余熱でじっくり冷ます」のが最大のポイントです。
一晩(約8〜10時間)放置して水が黒褐色に変わったら、流水にさらして濁りがなくなるまで数回水を替えます。この工程を経ることで、鮮やかな緑色と独特のとろみが引き出され、あらゆる保存工程へと進む準備が整います。