従来の歌謡曲が描く情緒的な風景とは一線を画し、「兄弟船」は圧倒的なリアリティで聴く者を圧倒する。命の保証すらない時化の海で、互いに背中を預け合う兄弟の絆。それはフィクションの詞世界ではなく、鳥羽自身が体感してきた日常の厳しさそのものであった。
この楽曲の成功によって、日本の音楽界には海洋演歌という独自のジャンルが確固たる地位を築くこととなった。荒れ狂う大自然に挑む男たちの生き様、家族や故郷への想いを乗せた力強い歌唱は、多様化する日本人の心に力強い希望の灯をともしたのだ。演歌が持つ本来の力強さを、これほどダイナミックに表現した楽曲は他に類を見ない。