モータースポーツの掲示板やSNSでは、時折「カナダは直線とヘアピンだけの単純なコースだから、ドライバーの腕よりもエンジンの馬力だけで決まるのではないか」という意見が見受けられます。しかし、これは現場の力学とセットアップの本質を見落とした大きな誤解です。
第一に、ストレートスピードを稼ぐためにダウンフォースを削りすぎると、シケインのブレーキングスタビリティ(制動時の車体安定性)が失われ、縁石に乗った瞬間にスピンを喫します。逆にダウンフォースを付けすぎるとストレートでカモにされるため、「低ドラッグと縁石走破性の妥協点」を見つけ出すセットアップ構築は全サーキット中屈指の難易度を誇ります。
第二に、ドライバーには「ブレーキを限界まで遅らせつつ、ブレーキディスクを焼き切らないように温度を管理する」という相反する技術が求められます。単にアクセルを踏んでブレーキを踏むだけでなく、ペダル踏力の繊細なリリース技術や、ステアリング舵角の精密さがラップタイムに露骨に反映される、極めてドライバーの技量が問われるトラックです。