旧国道20号の最高地点に位置する笹子隧道は、昭和初期の土木工学における到達点を示す極めて価値の高い建造物だ。ポータル(坑門)にあしらわれたクラシカルなアーチデザインと重厚なコンクリート構造は、当時の技術者の並々ならぬ気概と意匠へのこだわりを現代に伝えている。その技術的・歴史的価値が高く認められ、1997年には国の登録有形文化財に指定された。
山梨県大月市側からアプローチすると、鬱蒼とした木々の合間に突如として現れる重厚な佇まいが訪れる者を圧倒する。かつて甲州街道最大の難所と恐れられた笹子峠を車馬が容易に行き来できるようにした歴史的意義は大きく、まさに東京と山梨、さらには信州方面を結ぶ交通の要衝だった。時代の波とともに主役の座は新笹子トンネルや中央自動車道へと引き継がれていったが、建造物としての造形美はいまなお色褪せていない。