この店を訪れたなら、単品注文ではなく店主の樋口氏に身を委ねる「おまかせ」を選ぶのが鉄則だ。カウンター越しに客の食べるペースや酒の進み具合を見極めながら、一皿一皿が完璧なストーリーをもって運ばれてくる。その手並みはまさに、腕利きの指揮者がオーケストラを操るかのような鮮やかさだ。
塩、タレ、辛味噌といった定番の味付けはもちろん、時にはマスタードや和風だし、さらにはカレー風味を絶妙に効かせた仕込みなど、驚きに満ちたアプローチが次々と繰り出される。次はどんな部位が、どんな表情で登場するのか。七輪を囲む客たちは、まるで極上のミステリー小説をめくるような高揚感に包まれる。