劇場での生観劇に加え、現代では「歌舞伎オンデマンド」やNHKでのテレビ放送といった多様なメディアを通じて、全国のファンへ至高の舞台が届けられている。伝統芸能界が直面するデジタル化の波に対して、尾上菊五郎をはじめとする重鎮たちは決して保守的な姿勢ばかりをとっているわけではない。むしろ、若い層や海外の観客へ伝統の魅力を届ける貴重な機運として前向きに捉えている。
カメラを通じて伝える高精細な映像表現と、実際の舞台での距離感の違い。そうしたデジタルメディアの特性を理解した上で披露される演技は、画面越しであっても観客の心を揺さぶる。伝統を守ることは、変化を恐れないことと同義である。新時代のメディア活用が、歌舞伎の底力をより一層広げている。