まるも 犬として社会現象を巻き起こし、世代を超えて愛され続ける奇跡の存在がいる。フジテレビジョンの日曜夜を彩り、最高視聴率23.9%を記録した名作『マルモのおきて』。双子の薫と友樹、そして彼らを見守る護(マルモ)の日常に突如現れたのは、なんと人間の言葉を流暢に操る一匹の犬だった。愛くるしい眉毛のような毛並みと、哲学的でありながらどこかユーモラスな喋り口調は、当時の日本中のお茶の間を瞬く間に温かい笑顔で包み込んだ。
放送開始から長い年月が流れた今なお、配信プラットフォームで本作に触れた若い世代の間で、あの伝説的なまるも 犬の正体や制作秘話に再び熱い視線が注がれている。単なるペットの枠を遥かに超え、家族の一員として物語の核を担ったあの犬は、一体どのような背景から生まれ、いかにして唯一無二のキャラクターを確立したのだろうか。知られざる舞台裏を紐解いていく。
喋る犬ムックの犬種と声優の秘密!あの独特な声の主とは
『マルモのおきて』で視聴者の心を一瞬で掴んだ喋る犬「ムック (マルモのおきて)」。その愛らしいビジュアルの正体は、ドイツ原産の小型犬であるミニチュア・シュナウザーだ。豊かな眉毛と口髭のような特徴的な被毛を持ち、知的で勇敢、かつ愛情深い性格で知られる犬種である。作中で見せた豊かな表情と絶妙な首のかしげ方は、まさにこの犬種が持つ聡明さと人懐っこさが見事に活かされた結果だった。
そして、誰もが気になって仕方がなかったのが「ムックの声は誰が演じているのか」という謎だ。実は放送当時、エンドロールのクレジットでは声優の名前が伏せられており、視聴者の間では様々な憶測が飛び交っていた。その声の主こそ、当時子役として活躍していた岡亮である。大人の声優ではなく、あえて少年のあどけなさと独特の落ち着きを兼ね備えた岡亮の声を当てるという大胆なキャスティングが、CGによる口の動きと奇跡的なシンクロを生み出した。どこか達観していながらも子どもらしい温もりを帯びたあの喋りは、精密な演出と偶然の閃きが生んだテレビ史に残る発明だった。
撮影現場の裏側!阿部サダヲと芦田愛菜・鈴木福を支えた名演技
動物と幼い子役が中心となるドラマ撮影は、過酷を極めるというのがテレビドラマ制作における通説だ。しかし、本作の現場はまったく異なる空気に包まれていた。主演を務めた阿部サダヲの変幻自在なアドリブと包容力、そして当時わずか6歳だった芦田愛菜と鈴木福の天性の演技力に対し、ムックを演じたタレント犬も見事に応えてみせた。
ドッグトレーナーとの緻密な連携はもちろんのこと、現場では阿部サダヲが率先して犬とのスキンシップを図り、本物の家族のような信頼関係を築き上げていたという。カットがかかると芦田愛菜や鈴木福が無邪気に駆け寄り、ムックを囲んで笑い合う。そんな現場の飾らない空気感がカメラを通して画面越しに伝わり、視聴者の涙腺を激しく揺さぶるリアルな名シーンの数々を生み出す原動力となった。