日本の食を支える豊洲市場の仲卸売場では、季節ごとにコハダの取引風景が一変する。初夏に登場するシンコは、初値でキロあたり数万円を超えるご祝儀相場がつくことも珍しくない。しかし、魚本来の純粋な旨味と脂のバランスを追求するならば、本当の旬は晩秋から初冬にかけてだ。
海水温が下がる10月から12月頃のコハダは、皮が柔らかく、身の内部に適度な脂を蓄える。市場の目利きが選ぶ良質なコハダの条件は、銀色の鱗模様が鮮明で青みが深く、腹が丸く張っていて身に弾力があるもの。この時期のコハダを職人が適切に締めると、シャリの温度と相まって口の中でほろりとほどける至福の食感が生まれる。