都会的な洗練と切ない大人の情愛を描かせれば、右に出る者はいなかった。フジテレビジョンが制作し、鎌田敏夫が脚本を手がけた1988年の『ニューヨーク恋物語』は、全編ニューヨークロケを敢行した伝説的な作品である。マンハッタンの冷たい摩天楼を背景に、田村が演じた影のある男・田島雅之の孤独とダンディズムは、バブル期の日本中を熱狂させた。
井上陽水による主題歌『リバーサイド ホテル』のアンニュイなメロディに乗せて描かれたのは、単なるトレンディドラマの枠を超えた、孤独な魂の交錯だった。リンゴの皮をナイフで剥く所作ひとつにすら漂う色香。言葉少なに背中で語る演技は、現在見返しても息を呑むほどの完成度を誇っている。