岩鬼正美の代名詞といえば、ストライクゾーンから大きく外れたボール球を強打する「悪球打ち」です。高校野球編からプロ野球編に至るまで、数多くの名投手が投じるボール球を「グワァラゴワキーン」という唯一無二の轟音とともにスタンドへ叩き込んできました。
この打撃特性における最大の謎は、「なぜど真ん中のストレートが打てないのか」という点にあります。作中の描写および設定資料によると、岩鬼はストライクゾーンに来る球に対して極度の集中力低下やピントのズレを起こす特殊な動体視力を持っています。整然としたボールに対しては体が反応せず、目測を誤って空振りや凡打を繰り返してしまいます。
一方で、顔面すれすれのビーンボール、ワンバウンドする暴投、打者の背中側を通るような大悪球に対しては、研ぎ澄まされた野生の勘が極限まで発動します。岩鬼本人の言葉を借りれば「悪球になればなるほど、球が巨大なスイカのように大きく見える」状態となり、人間離れした腕力と腰の回転でホームランにしてしまうのです。投手が敬遠のために投げた外角高めの明らかなボール球を無理やり踏み込んでスタンドインさせた場面は、高校野球史上最大の衝撃シーンとして語り継がれています。
また、口にくわえている「葉っぱ」にも重要な機能的理由が存在します。中学時代からくわえ続けているこの葉っぱは、単なる不良少年の装飾ではありません。風向きや風速を微細に感知する風速計の役割を果たすと同時に、打撃時に奥歯を強く噛み締める際のクッションおよび重心バランスの安定器として機能しています。作中では葉っぱを失うと平衡感覚や集中力を乱す場面も描かれており、岩鬼の超人的な運動能力を支える不可欠なギアであることが明かされています。