日本で「赤缶」の愛称で親しまれるCRC 5-56の歴史は、1960年代初頭にまで遡る。米国CRCケミカルズ社が開発したこの画期的な防錆・潤滑剤に目をつけたのが、呉工業株式会社の創業者である呉繁夫だった。当時、急速な高度経済成長を遂げつつあった日本の製造業やモータリゼーションの現場では、金属の防錆と機械の円滑なメンテナンスが喫緊の課題となっていた。
呉繁夫はこの製品の持つ潜在能力をいち早く見抜き、日本市場への導入を決断。単なる輸入品の販売にとどまらず、日本の気候風土や過酷な作業環境に合わせた品質管理を徹底したことで、国内の化学工業分野において防錆潤滑剤という新たな市場カテゴリーを確立させた。現在ではプロの現場から一般家庭まで、金属メンテナンスの代名詞として揺るぎない地位を築き上げている。