収録されている4つの物語は、それぞれ独立したミステリーとしても完成度が高く、尚美と新田の成長記録としても楽しめます。各話の核心に迫るあらすじを解説します。
第1話「それぞれの仮面」
ホテル・コルテシア東京のフロントに立つ山岸尚美のもとに、大学時代の元恋人・宮原佑介が女性実業家の畑中成美を伴って宿泊に訪れます。佑介は尚美に対し「彼女にプロポーズをしたいのでサプライズ演出を手伝ってほしい」と依頼します。
しかし、尚美は成美の持ち物や言動に漂う不審な点を見逃しませんでした。調査の結果、成美には別れた夫によるストーカー被害の影があり、佑介へのプロポーズ計画の裏には別の思惑が潜んでいることが判明します。尚美は元恋人への私情を抑え、「お客様の秘密とプライバシーを守る」というホテルウーマンとしての鉄則を貫き、事態を鮮やかに収束させます。
第2話「ルーキー登場」
警視庁捜査一課の係長・本宮の下に配属されたばかりの新人刑事・新田浩介。練馬区の高級住宅街で著名な料理研究家が殺害された事件の捜査本部に加わります。
本宮をはじめとするベテラン刑事たちは被害者の夫を疑いますが、彼には完璧なアリバイが存在していました。生意気で協調性に欠けると周囲から白眼視されていた新田は、被害者の自宅に残されたわずかな違和感と持ち前の卓越した観察眼、さらには英語力を駆使して独自の仮説を構築。新田の鋭い直感とロジックがベテランたちのアリバイ崩しに決定打を与える、若き敏腕刑事の誕生譚です。
第3話「仮面と覆面」
ホテル・コルテシア東京に、素顔を一切明かさない人気覆面作家・迎伸彦がお忍びで長期滞在することになります。新作の執筆に集中するための滞在でしたが、作家の正体を突き止めようとする熱狂的なファンやパパラッチの影がホテル内に忍び寄ります。
尚美は作家の担当編集者とともに警戒を強めますが、客室内で予期せぬトラブルが発生。尚美は機転を利かせたルームチェンジと徹底した情報管理によって、作家が守りたかった「覆面という名の仮面」の裏にある切実な事情を守り抜くことに成功します。
第4話「マスカレード・イブ」
東京・南新宿のマンションで大学教授・岡島孝良が刺殺される事件が発生。容疑者として浮上したのは、かつて岡島と愛人関係にあり、手ひどく捨てられた女性・日下部絵里花でした。しかし彼女には、事件発生時刻に「ホテル・コルテシア大阪」に宿泊していたという完璧なアリバイがありました。
アリバイを崩すべく大阪へ飛んだ新田。一方、コルテシア大阪には研修と応援のために東京から派遣されていた山岸尚美の姿がありました。2人は直接顔を合わせて対峙することはないものの、宿泊記録の確認や顧客対応という接点を通じて、見えない糸で結ばれながら巨大なアリバイトリックの解明へと迫っていきます。