朝日大学歯学部をはじめとする中堅・下位私立歯学部を受験する際、学力以上に深刻な問題として横たわっているのが、受験生と親との間に生じる特有の家族病理です。
歯学部の入学者には、実家が開業歯科医院を経営している「跡取り息子・娘」が極めて高い割合で含まれます。昭和から平成にかけて定着した医療系一族の世襲文化の中で、親世代は「何としてでも歯科医師免許を取らせて医院を継がせたい」という強烈な執念を抱きがちです。ここに、家族社会学で指摘される「親子の心理的共依存」の罠が生じます。
医学部受験に失敗し、多面的な学力選抜を潜り抜けられなかった子どもに対し、親が「朝日大学なら学費も安いし、推薦で確実に入れるから」と進路を主導するケースが後を絶ちません。しかし、本人の内発的な動機づけ(自らの意志で歯科医師になりたいという覚悟)が欠落したまま入学した場合、高確率で進級の壁に激突します。
膨大な専門用語の暗記、手先の器用さが求められる模型実習、そして終わりの見えない国家試験対策――。これらを乗り越える原動力は、他者から押し付けられた義務感ではなく、自律的な精神力です。健全な「心理的バウンダリー(親と子の境界線)」が引かれていない家庭では、子どもが留年を繰り返した際に「親の期待を裏切った」という自己否定感から精神的に破綻し、そのまま中退・退学に至る悲劇が繰り返されています。
親の人生と子どもの人生は別物です。偏差値や学費のハードルが低いからといって、本人の覚悟を確認しないまま進学のレールを敷くことは、数千万円の教育投資と子どもの20代の貴重な時間をドブに捨てる行為になりかねません。