2015年、渡瀬さんに胆のうがんが発覚する。しかし、彼は病を公にすることなく、過酷な抗がん剤治療や放射線治療を受けながら現場に立ち続ける道を選んだ。『警視庁捜査一課9係』をはじめとする人気作品の撮影を休むことなく、病魔と対峙した日々はまさに凄絶の一言に尽きる。
この闘病生活を最も近くで支え続けたのがい保さんだった。副作用に苦しむ夫の傍らに寄り添い、食事の工夫から精神的なフォローまで、一刻も目を離さずにサポートを継続。渡瀬さんが「最後まで現場で死にたい」という役者としての執念を全うできたのは、い保さんの無条件の理解と覚覚悟があったからにほかならない。2017年3月、72歳で旅立つその最後の瞬間まで、夫婦の深い絆が途切れることはなかった。