なぜ人間はここまで集団の波に呑み込まれるのか。認知神経科学の研究チームが発表したデータは極めて興味深い。
大規模イベント中の観客の生体データを分析したところ、クライマックスシーンにおいて数千人規模で心拍リズムと呼吸のタイミングが一致する現象が確認された。脳波のコヒーレンス(同期性)が高まり、個としての自我意識の境界線が一時的に薄れるというのだ。
「人間は本能的に、群れとして一つの意識体になることに快感を覚える生物です」。研究者はそう指摘する。テクノロジーは単に、太古から眠る人間の本能を解き放つ触媒に過ぎないのかもしれない。