給与体系に関して現場の社員が最も強いショックを受けるのが、「定期昇給の頭打ち」と「定昇廃止企業の増加」という現実です。オープンワーク等の企業口コミプラットフォームや取材現場に寄せられた声からは、教科書通りの制度説明では見えてこない過酷な実態が浮かび上がります。
「40代半ばで給料がピタッと止まった」年齢制限の壁
「定期昇給は何歳まで続くのか」という疑問に対し、多くの企業が出している答えは「35歳から42歳前後」です。20代から30代前半までは生活支援の意味合いも含めて自動的に昇給カーブを描くものの、一定の年齢・職能資格に達した時点で「資格内上限給(頭打ち)」に設定されている企業が一般的です。
大手製造業の中堅社員(43歳・男性)は、自らの給与明細の変化について次のように語っています。
「20代の頃は毎年4月になれば5,000円から7,000円は上がっていたので、ローンを組む際も『給与は増えていくもの』と信じ込んでいました。しかし40歳を超えて主任クラスのテーブル上限に達した瞬間、春の昇給通知書に印字された昇給額は『0円』でした。管理職に昇格しない限り、定昇は1円も発生しない制度になっていたのです。物価は上がり続けているのに額面が変わらないため、実質的には毎年大幅な減給を食らっている感覚です。」
「定昇廃止」に踏み切る企業の思惑と社員側のデメリット
さらに近年、若手・中堅を含めた全社的な「定期昇給の廃止・縮小」に踏み切る企業が相次いでいます。名目は「ジョブ型雇用への移行」や「頑張った人が報われる完全成果主義への刷新」ですが、現場目線で見れば明確な「人件費の固定費化抑制(コストカット)」という側面を否定できません。
定期昇給が廃止された職場で生じる決定的なデメリットは以下の3点です。
- 中長期的な生活設計の崩壊:将来の昇給見込みが読めなくなるため、住宅ローンの返済計画や子どもの教育費の積算に重大なリスクが生じる。
- 若手社員のエンゲージメント低下と流出:「年次を重ねても給与が上がらないなら、この会社に長く留まる合理的理由がない」と判断し、初期研修を終えた20代後半の優秀層から他社へ転職していく。
- 社内競争の激化による組織のギスギス感:昇給枠がゼロサムゲーム(誰かを上げたら誰かを下げなければならない仕組み)になるため、業務ノウハウの共有が滞り、評価者の顔色を窺う内向きの仕事が増える。