メゾン マルジェラの洋服を手にしたとき、誰もが最初に抱く疑問が「なぜタグにブランド名が印字されていないのか」という点です。一般的な高級メゾンであれば、自らのステータスを誇示するために豪華な織りネームや目立つロゴを配置するのが常識でした。しかし、マルタン・マルジェラはその慣習を真っ向から否定しました。
マルジェラ無地タグに文字がない理由の核心にあるのは、徹底したマルジェラアノニマスデザイン(匿名性)の追求です。「服を買う人は、ブランドネームという看板にお金を払うのではなく、服の仕立て、カッティング、素材、そしてデザインそのものを評価して選ぶべきだ」という純粋な問いかけが、この真っ白なタグには込められています。
創業者であるマルタン自身、公の場に姿を現さず、インタビューも「We(私たち)」という主語を用いたファックスで回答するなど、デザイナー個人の神格化を徹底して拒否し続けました。マルジェラ白タグの意味とは、単なるミニマリズムではなく、服をブランドの記号から解放し、着る人自身の感性に委ねるというモード界への革命宣言だったのです。