咬筋は頬の外側に位置する四角形の分厚い筋肉で、食物を噛み潰す強大なパワーを発揮します。解剖学的には浅部(せんぶ)と深部(しんぶ)の2層構造に分かれており、それぞれの筋線維の走行が異なる点を正確に把握しておく必要があります。
まず押さえておきたいのが、全体の基本的な付着部です。大まかな定義としては「起始=頬骨弓」「停止=下顎枝外面・咬筋粗面」となりますが、より精緻なテストや臨床評価では以下の違いが問われます。
【浅部の特徴】
・起始:頬骨弓の前2/3の下縁および頬骨突起
・停止:下顎角の外面にある咬筋粗面(こうきんそめん)
・線維の走行:斜め後下方に向かって走り、強い力で下顎を前上方へと引き上げます。
【深部の特徴】
・起始:頬骨弓の後2/3の下縁および内面
・停止:下顎枝の外面上部および筋突起の基部
・線維の走行:ほぼ垂直(わずかに前下方)に下行し、下顎を真上に引き上げる働きを担います。
そして支配神経は、脳神経第Ⅴ対である三叉神経の第3枝(下顎神経:V3)から分岐する「咬筋神経」です。下顎切痕を通過して咬筋の深面から進入する走行ルートも、解剖学の構造問題として頻出するポイントです。