大砲の世界で最も頻繁に議論されるのがカノン砲と榴弾砲の違いです。見た目は似通っていても、両者は設計思想と弾道特性が根本から異なります。
カノン砲(加農砲 / Gun)は、砲身長が口径の30倍以上(長砲身)あり、高い初速で低伸弾道(直線に近い弾道)を描いて砲弾を撃ち出す大砲です。弾道がフラットなため、敵の戦車や艦船、トーチカなどの垂直な装甲・壁面を直撃貫通する用途に適しています。一方で、山や遮蔽物の背後に潜む敵を狙うのは苦手とします。
対する榴弾砲(りゅうだんほう / Howitzer)は、比較的短い砲身から中程度の初速で、山なりの大きな放物線を描く曲射弾道で発射します。仰角を大きく取れるため、障害物を飛び越えて塹壕や遮蔽物の裏側に潜む敵陣地へ砲弾を真上近くから降らせて制圧する能力に長けています。
主な大砲の種類と特徴を整理すると以下の通りです。
- カノン砲:長砲身・高初速・低伸弾道。装甲貫通やピンポイントの遠距離直接照準射撃に特化。
- 榴弾砲:中砲身・曲射弾道。広範囲制圧や遮蔽物越しの間接照準射撃に最適で、現代陸軍の主力。
- 迫撃砲(Mortar):短砲身・軽量・極端な高仰角(45度以上)。歩兵部隊が手軽に前線で運用できる近接火力支援用。
- 対戦車砲:戦車の装甲貫通のみを目的に極限まで初速を高めた直射専用砲(現在はミサイルや戦車砲へ統合)。
- 高射砲(対空砲):高空を飛ぶ航空機を迎撃するため、高初速・高速連射・高仰角射撃に特化した火砲。
なお、現代の兵器体系では砲身製造技術の進歩により、52口径という長砲身を持ちながら自在な曲射もこなす「カノン榴弾砲(ガン・ハウザー)」が主流となっており、従来の境界線は高度に融合しています。